【教育業界におけるAR/VR/メタバース】導入メリットや活用事例を紹介!

この記事では、AR・VR・メタバース技術の基礎知識から始まり、教育業界における活用メリット、国内外の実際の活用事例を紹介し、導入する際の重要なポイントと課題について深く掘り下げます。

これらの技術の可能性をより深く理解し、活用したいと考えている教育関係者の方は、ぜひご覧ください!

目次

AR/VR/メタバースの基礎知識

まずは、AR/VR/メタバースについて、簡単に説明します。

技術定義教育業界での活用例
AR(拡張現実)現実世界にデジタル情報を重ね合わせる技術生徒が3Dモデルを使って生物学や地理を学習
VR(仮想現実)完全に仮想化された環境を体験する技術仮想的な旅行や実験を通じた学習
メタバース継続的に存在する仮想空間での交流や活動の場オンライン授業や仮想キャンパスの提供

AR(拡張現実)とは

AR技術は、現実の環境にデジタル情報を重ねることで、リアルな体験に仮想の要素を加えます。

例えば、生徒がタブレットを通して見ると、教科書の図が立体的に展開され、動く様子を見せるなどがあります。

この技術は、学習者の理解を深めるための視覚的な補助として有効で、特に理科や地理のような視覚的理解が重要な科目で活用されています。

生徒たちは、従来の教材では難しい、動きや立体的な形状を直接見ることで、より深く学習内容を理解できます。

VR(仮想現実)とは

VRは、ユーザーを完全に仮想化された環境に没入させる技術です。

ヘッドセットを通して、360度の仮想世界を体験することができ、実際にその場にいるかのような感覚を得られます。

教育現場では、例えば、VRを使用して歴史的な場所や未来の都市を探索したり、科学的な実験を仮想空間で行うなど、生徒の学習体験を豊かにしています。

この技術により、物理的な制約を超えて、様々な場所や状況を安全に体験できるため、教育の可能性が広がります。

メタバースとは

メタバースは、継続的に存在する仮想空間での交流や活動を提供するプラットフォームです。

この空間では、ユーザーがアバターを通じて互いに交流したり、さまざまな活動を行うことができます。

教育におけるメタバースの活用例としては、オンライン授業の実施、仮想キャンパスの構築、学生間や教師とのコミュニケーションの場の提供などがあります。

特に、遠隔地にいる生徒や教師も同じ空間で交流することが可能になるため、地理的な制約を超えた教育の実現が可能です。

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教育業界の課題をAR/VR/メタバースを導入することで解決可能

ここからは、教育業界が抱える課題をAR/VR/メタバースがどのようにして解決するのかを解説していきます。

1.メタバース上の学校で交流の機会を増やし、学習の質を向上させる

リモート学習に伴う直接的な交流の減少と教育の質の課題に対し、メタバース学校という新しい学校が有効です。

メタバース空間上の学校では、生徒と教師がアバターを通じて相互作用し、実際の教室に近い体験をリモートで再現できます。

例えば、メタバース内の仮想学校では、生徒たちはアバターを使って教室に「座り」、他の生徒や教師と対話し、グループ活動に参加することが可能です。

また、物理的な制約を超えた実験や体験学習も実施でき、教育内容の豊かさと生徒の参加意欲を高めます。

このように、メタバース空間の学校は、リモート学習においても、よりリアルな対面授業に近い教育体験を実現し、学習の質を向上させる有効な手段となります。

2. 時間や場所の制限を超えて学習できるため、教育格差を縮小できる

世界中で教育格差は深刻な問題となっています。特に、質の高い教材や経験豊富な教師へのアクセスが限られている地域では、子供たちの学習機会に大きな差が生じています。

VR教材の普及は、この格差を緩和する有効な手段となり得ます。インターネットがあればどこからでもアクセスできるVR教材は、遠隔地に住む生徒でも高品質な教育コンテンツを体験できるようにします。

たとえば、VRを使って世界の有名な美術館をバーチャルで訪問したり、実験器具が不足している学校で仮想の科学実験を行うことが可能になります。

これにより、教育の質を向上させ、地域による教育格差を縮小することができます。

3. ARを活用した理科実験で、安全かつ自由なSTEM教育が実現する

VR化学実験ソフト「SuperChem VR」

科学、技術、工学、数学(STEM)教育への関心が高まっていますが、従来の教育方法では、理論的な知識が中心となりがちで、実践的な体験や創造性を育む機会が不足していることが問題とされています。

ここで、ARやVRは、特に理科の実験教育に革命をもたらします。

AR導入により、生徒たちは実際の実験や設計作業をバーチャル空間で体験でき、より深い理解と実践的なスキルを習得できます。

例えば、化学実験での反応の観察や、生物学での解剖など、3DCG技術を活用することで、危険な実験や高価な材料が必要な実験もリスクなく実施できるようになります。

これにより、生徒たちは理論だけでなく、実際の応用を通じて学習することができ、STEM分野への関心と理解を深めています。

また、VR環境での失敗はリアルなリスクを伴わないため、生徒たちはより自由に試行錯誤し、創造的な思考を育むことが可能です。

AR・MR・メタバースの教育現場での活用事例9選

ここからは、AR・VR・メタバースの教育現場での活用事例を合計で9つご紹介します。

ARの活用事例

1.zSpace 理科教育に強い教育プラットフォーム

zSpaceは、AR/VR技術を利用した教育プラットフォームで、特に理科教育においてその効果を発揮しています。

このシステムを使用することで、学生たちは3Dの解剖学モデルや物理的な実験を仮想空間で直接操作し、視覚的かつインタラクティブな方法で学ぶことができます。

この技術により、教室内で複雑な科学的概念やプロセスをより深く理解することが可能になり、学生の関心を引きつけ、学習効果を高めています。

詳細はこちら→zSpace Webサイト

2.聖学院中学校・高等学校 生徒自らがARシステムを制作する試み

聖学院中学校・高等学校では、生徒たちが自らARシステムを制作するプロジェクトを実施しています。

この取り組みにより、生徒たちはテクノロジーの理解を深めるとともに、創造的な思考を養うことができます。

具体的には、校内の施設や教室の表札をマーカーとして使用し、タブレットで読み込むと3DCGモデルが出現するシステムを開発しました。

これにより、生徒たちは技術の背景を学びながら、実践的な問題解決スキルを身に付けています​​。

詳細はこちら→聖学院 ニュースリリース

3.Wonderscope 絵本からキャラクターが飛び出す

Wonderscopeは、子供向けのARアプリケーションで、ユーザーと物語のキャラクターとの垣根を取り払います。

このアプリは、物語の中で子供たちが能動的に話に参加することで、言語スキルや読解力を向上させることを目指しています。

ARを用いることで、従来の読書体験を超えて、キャラクターとのインタラクティブなやりとりや、物語の世界を立体的に体験することが可能になります。

これにより、子供たちは読書に対する興味と理解を深めることができます。

VRの活用事例

4.ブロンクス ラテン高校 VRで世界遺産ツアー

ブロンクス ラテン高校(アメリカ、ニューヨーク)では、VRを用いた社会科の授業が行われています。

Google Expeditionsを使用し、学生はVRを通じて世界中の名所や世界遺産を探索できます。

この方法は、生徒たちがただ写真を見るだけの学習から一歩進み、異国の文化や歴史を直接「体験」することが可能になります。

この没入型の学習体験は、生徒の関心を引き、より深い理解を促進します​​。

5.長岡工業高等専門学校 授業や講演ができるバーチャルキャンパス

長岡工業高等専門学校では、株式会社新潟放送が制作した「長岡高専バーチャルキャンパス」を公開しました。

これは全国の高等専門学校で初の3Dメタバース空間であり、授業や講演のためのセミナールーム、グループワーク室、進路相談ができるミーティングルーム、学生同士の交流を促進するラウンジなどが設けられています。

このバーチャルキャンパスは、学生や教職員に限らず、他の高専機構の職員や特定のイベントで一般の人も利用可能です。
詳細はこちら→長岡高専バーチャルキャンパス Webサイト

6.スタンフォード大学 VRを活用した講義

スタンフォード大学で2021年の夏から開かれている「Virtual People」コースは、授業のほぼ全部でVR技術を使用する革新的な講義です。

このコースでは、エンターテイメント以外の分野、例えば文化やエンジニアリングでのVRの普及についてリモート講義形式で学びます。

カリキュラムの中で特に人気なのは、VR環境構築のためのプログラミング演習です。

さらに、VR内での「課外学習」として、人種的不平等を経験した男性の人生を体験し、人種的寛容さを学ぶコンテンツも提供されています。

メタバースの活用事例

7.角川ドワンゴ学園 メタバース上で入学式を開催

角川ドワンゴ学園では、デジタル技術を活用した新しい教育の形を提案しています。

令和四年度の新入生向けには、インターネットを通じて参加できるメタバース入学式を実施しました。

これは、デジタルを駆使して学習環境を革新しようとする学園の取り組みの一環であり、新時代の教育の可能性を示しています​​。

8.NTTスマートコネクト 教育機関向けメタバース

NTTスマートコネクトとNTTデータNJKは、教育機関向けの3Dメタバースサービスを提供しています。

このサービスは、仮想空間を利用して、地理的・時間的制約を超えた多様な学びをサポートします。

実際の教育現場と同様の「教室」「集会所」「面談室」などの空間を提供し、授業や進路相談、全体集会などを円滑に行うことが可能です。

また、アバターを用いたディスカッションにより、新たなコミュニケーションの形を提供しています​​​​​​。

詳細はこちら→NTTスマートコネクト Webサイト

9.東京都教育委員会 メタバース学校で不登校生徒を支援

東京都教育委員会は、支援が必要な子供たちのために「バーチャル・ラーニング・プラットフォーム」を開発し、区市町村に提供する取り組みを開始しました。

このプラットフォームは、日本語指導や不登校支援などに活用され、新宿区との協定のもとデモ運用を行い、その効果を検証しています。今後は成果を踏まえて事業の充実と拡大を図る計画です​​。

詳細はこちら→東京都教育委員会 Webサイト

AR/VR/メタバースを導入する際の3つのポイント

ここからは、AR/VR/メタバースを教育現場で導入する際の3つのポイントをご紹介します。

1. 目的との整合性を確認する

AR/VR/メタバースの導入は、教育的目的との整合性を最優先に考えるべきです。

これらの技術は、単に新しいものとして導入するのではなく、具体的な教育目標を達成するための手段として利用することが重要です。

例えば、生物学の授業で細胞の構造を視覚化するためにVRを用いる、歴史の授業で古代の遺跡をメタバースで再現するなど、教育内容と技術の使い方を適切にマッチさせることが必要です。

2. 技術インフラや研修体制を整備する

技術的な準備も教育現場での導入において重要なポイントです。

適切なハードウェア、ソフトウェアの選定、安定したインターネット環境の確保など、技術面での準備が欠かせません。

また、教師や生徒に対する十分な研修とサポート体制を整えることで、技術の効果的な活用が可能になります。

導入コストやメンテナンス費用も考慮し、長期的な視点での計画が求められます。

3. 生徒の安全と健康に配慮する

AR/VR/メタバースの使用においては、生徒の安全と健康への配慮が重要です。

VRヘッドセットの長時間使用による目の疲れ、身体への影響、プライバシーの保護など、さまざまなリスクへの対策が必要です。

生徒たちの健康を守るために使用時間の制限、適切な休憩時間の確保、個人データの保護に関するガイドラインの設定など、安全面での検討を行う必要があります。

おすすめAR・VR・メタバース開発会社3選

ここからは、おすすめのAR・VR・メタバース開発会社を3社ご紹介します。

1.株式会社Forgers

  • 会社概要: Forgersは、家具・小売業界や製造業界、通信業界など幅広い会社を対象にAR・VRアプリケーションやメタバース開発を支援している会社です。
  • 事業内容: 特にリアルタイムの3Dグラフィックスを活用したARアプリケーションの開発に強みを持ち、リアルなインタラクションを提供しています。
  • 開発実績: VR・メタバースショッピングアプリの企画・開発や、EC・小売店舗向けARサービス「RITTAI」を提供しています。

2.ソフトアンドニュー株式会社

  • 会社概要: ソフトアンドニューは、XR(AR/VR/MR)のICT支援・推進企業として、教育、医療、産業界などの社会課題解決や地方創生に貢献している会社です。文部科学省のGIGAスクール構想やSTEAM教育、EdTechの導入に向けた活動も行っています。
  • 事業内容: 米国EON Reality社と連携して、世界トップレベルのXR技術を活用した3Dモデル・360度画像等のコンテンツを提供しています。
  • 開発実績: XRとAIの組み合わせによる新しい学習体験サービス「Merged XR」を提供しています。スマートフォンやタブレットで対象物を3Dモデル化し、それをEON-XRで使用できます。

3.株式会社リプロネクスト

  • 会社概要: リプロネクストは、デジタル技術を駆使して新たな価値を創出する企業です。
  • 事業内容: 3Dスキャニング技術、VR・ARコンテンツの制作を行っています。
  • 開発実績: 歴史的建造物の3D再現、企業PR用VR体験。児童が外国語の学習で使用するメタバース空間を制作しています。

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今後の教育業界でのAR・VR・メタバース活用の展望/考察

ここからは、今後の教育業界でのAR・VR・メタバース活用の展望/考察になります。

1.より実践的なスキルを習得することができる

AR・VR技術の進展により、医学や工学などの専門分野においてより実践的なスキルの習得が促進されるでしょう。

例えば、医学生がARやVRを使用して解剖学を学び、仮想の患者を用いた手術の練習を行うことが可能になります。

これにより、実際の臨床環境に近い条件下での学習が実現し、より高度な技術や知識の習得が促進されます。

また、エンジニアリングの学生がARやVRを使って複雑な機械やシステムの仮想モデルを構築し、実際の操作やメンテナンスの練習を行うことも想定されます。

2.AIとの融合で、より個別化された学習体験を提供する

AIとVRの組み合わせにより、よりパーソナライズされ、インタラクティブな学習体験が実現されるでしょう。

AIが生徒の学習進度やスタイルを理解し、VR環境内で最適な学習コンテンツを提供します。

これにより、教育は一層個別化され、各生徒の能力に応じた最適な学習経路が創出されます。

さらに、ブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)技術の発展により、生徒の思考や感情を直接読み取ることで、学習体験をより深くパーソナライズする可能性もあります。

例えば、生徒の集中力や理解度をリアルタイムで把握し、その情報を基に教材の難易度を自動調整するなどの応用が考えられます。

3.メタバースによる教育の国際化が進む

メタバースは教育の国際化を一層加速させるでしょう。生徒が地理的な制約にとらわれることなく、世界中の教室や講義に参加できるようになります。

例えば、日本の学生がVRを通じてアメリカやヨーロッパの大学の講義に参加し、異文化間の交流や協力を深めることが可能になります。

このようなグローバルな仮想教室は、言語学習や国際理解教育において特に有効です。

異なる文化背景を持つ学生たちが一堂に会し、ディスカッションを行うことで、より豊かな学習体験が実現します。

また、国際的なプロジェクトや共同研究においても、メタバースはコミュニケーションの障壁を低減し、効率的な協力を促進します。

まとめ

本記事では、AR・VR・メタバースの教育現場での活用事例、導入のメリットと課題、さらに開発会社の紹介を行いました。これらの技術は教育分野において革新的な可能性を持ちつつも、導入コストや技術的な制限、教育目的との整合性などの課題も存在します。

本記事が、AR・VR・メタバースの教育現場での導入を検討している方のお役に立てば幸いです。

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