ECや実店舗でのAR/3D活用事例10選|ARによる小売・コマースへの革新とは

近年、家具や家電などの小売業界においてAR(拡張現実)技術や3Dデータの活用が盛んになってきています。

多くの企業がオンラインストアや実際の店舗・ショールームや商業施設で活用しており、消費者体験を革新し、ビジネスの可能性を大きく広げる力を持っています。

本記事では、ARの基本知識から、小売業界におけるその魅力的な活用方法、そして実際の事例までを詳しくご紹介します。

実店舗とEコマース、それぞれの分野でどのようにARが利用されているのか、どういったARサービスが存在するのかなど、紹介していきます。

目次

AR(拡張現実)の概要とEC・実店舗での活用方向性とは

まず、AR(=Augmented Reality、拡張現実)は、現実世界にデジタル情報を重ね合わせる技術を指します。
スマートフォンやタブレット、専用のARグラスを通じて、現実世界にバーチャルのオブジェクトや情報を表示することができます。

現在、ARは小売業界や製造業界、教育、医療業界など多くの業界で活用されています。
※参考;AR活用事例についてさらに詳しく知りたい方はこちら
2024年最新事例|AR/MRのビジネスへの導入・活用事例

では、具体的に小売・コマース業界において、ARがどのように活用可能なのか、解説していきます。

ECへの導入:AR試し置き・試着でユーザーの購入前の不安を解消し、CVRや返品率を向上

ECサイトでのショッピングの最大の課題は「ユーザーが実際に商品のサイズやカラーをリアルに確認できない点」に尽きます。

家具や家電は、サイズが大きく、単価も高いことから、現在の自宅の配置予定の場所にフィットするのかを実店舗以上に確認できません。

また、アパレル業界であれば、試着し自分の外見に似合うのかどうかをフィッティングして確認することができません。

この問題を解決するのが、AR(拡張現実)技術の活用です。

例えば、ネットショップの商品ページ内にARによる試し置き機能を導入することで、商品ページを閲覧しているユーザーは、その商品を自宅にARで家具を配置し、「入るのか、サイズは問題ないか」「すでに配置している他のインテリアと相性は良いか」などを確認することができます。

実際にARをECに導入した多くの企業はECの購買率が高まり、売り上げを伸ばしています。
※家具ECのAR導入事例・解説はこちら→ニトリも導入!AR家具配置シミュレーション解説|ECや実店舗での最新活用事例や導入効果まとめ

実店舗①:在庫のない商品も、ARで表示し検討できる

ARを活用すると、顧客が探している商品のうち、店舗在庫がない商品でもその場に配置してプレゼンテーションすることができます。

「商品を実際に見て、サイズを確かめたかったから来店したのに、在庫がなく見ることができなかった…」といった顧客もいるはず。

そんな時に、ARやMRで顧客に商品を提案することで、実際に商品がそこにあるかのような体験を提供できます。

スマートフォンのようなデバイスでカメラ越しにARで試し置きすることもできますが、2023年に発売された「Meta Quest 3」というMRのデバイスを活用すると、立体的に3Dオブジェクトを現実空間に配置し、本当にそこに商品があるかのような体験を提供することが可能です。

最新のデバイスを用いた販促・営業提案は、店舗ならではの体験の醍醐味の一つと言えるかもしれません。

MRデバイスやARデバイスを使った販促・提案にご興味がある方は、こちらからお問い合わせください。

実店舗②:体験型店舗を実現し、顧客満足度やブランディングが向上する

実店舗での買い物は商品を直接見て触れることができるというメリットがありますが、ECの台頭もあり「店舗ならではの体験」が求められています。

ここで、AR技術を導入することで、実店舗でのショッピング体験を劇的に向上させることができます。

例えば、自宅ではなく、店舗や施設に来たからこそできる新たな体験として、「スムーズなファッションのAR試着・シミュレーション」や「店舗内でのARを活用した謎解きコンテンツと、ショッピングの融合」といった取り組み例が生まれています。
※例:hakuhodo-XR、AR技術を活用し 新しい顧客体験の創出に向けた商業施設での実証実験を開始

こういった工夫を凝らすことで、実店舗でのショッピングが単なる「買い物」から「体験」へと変わり、顧客のリピート率の向上や新規顧客の獲得につながるのです。

実店舗でのAR体験提供事例3選

スターバックス – ARによるパッケージのエフェクト

スターバックスは、AR技術を活用して顧客体験を革新しています。

例えば、季節限定のプロモーションや新商品の情報もARを使って楽しむことができます。

このような取り組みにより、スターバックスは顧客に対して単なるコーヒーショップの体験を超えた体験を提供しています。

これは、AR技術が顧客エンゲージメントを高め、ブランド体験を深化させる一例として、大きな注目を集めています。

高島屋 – アパレルでARによるバーチャル試着機能を提供

名古屋タカシマヤの4階で、ARによるバーチャル試着が登場しました。

大型のモニターには、モニターの前に立つユーザーに洋服をバーチャルで試着された状態を映し出します。

これにより、さまざまな組み合わせの迅速な検討や、在庫のない商品のフィッティングなども可能になります。

参考:名古屋タカシマヤで「バーチャル試着」-AR技術で人の動きとも連動

ENEN – 3D・XRを活用した体験型の家具販売店舗

2023年にリリースされた、新たな家具ブランド・ENENは、3DやAR/VRを活用した新たな家具販売の体験を実現しています。

東京・自由が丘のショールーム内では、大型モニターに実寸大の家具を3Dで表示し、店舗内にない商品も実際の大きさで確認できるようにしています。

また、ミニチュアの家具を配置すると、自動で3Dのお部屋が生成され、空間レイアウトをシミュレーションできる新たなツールを活用。

楽しく、手触り感を持ってインテリアの配置を検討できる新たな体験を提供しています。

これらのツールはVR/AR開発スタートアップである株式会社Forgersが提供しました。

※参考記事:ENENの家具を見て・触れて・体験!自由が丘にショールーム型店舗・ENENサポートストアがオープン

ECサイトにおけるAR活用事例3選

ニトリ|ECや店舗にAR・3D家具シミュレーター導入

老若男女に愛される、国内最大手の家具メーカー・ニトリ。

ついにオンラインショップにもARが導入され、多くの商品をARで試し置きすることができます。
ニュースリリース:https://www.nitorihd.co.jp/news/items/6bdf4f6c09f668199cce49aa04760eb3.pdf

「スマホで簡単!3Dで試し置き」導⼊によりご⾃宅でも店頭でも、気になる商品を実⼨⼤で確認することができ、お客様に便利で快適な買い物環境をご提供いたします。

と発表しており、ECだけでなく、店舗でも在庫のない商品をARで実寸台表示し、お客様が確認できるようになるとのことです。

現在300点の商品がAR対応しており、今後数ヶ月で1000アイテムまで増やしていく予定とあり、ニトリのECや店舗の利便性、体験性がますます高まりそうです。

※ニトリは、株式会社Forgersが提供するARサービス「RITTAI」を導入しています。

3D家具配置シミュレーターとのセット導入に

ちなみにニトリは「3Dインテリアシミュレーター・RITTAI ROOM 」も導入しており、RITTAIとRITTAI ROOMでのデータの共通管理による運用不可の削減を実現しました。
RITTAI ROOMは店舗の販売員や、オンラインのインテリアコーディネート相談室で、お客様の間取りのヒアリングや家具配置提案シーンで活用するそうです。

ニトリのARページはこちら:https://www.nitori-net.jp/ec/feature/nitoriAR/

ARによるお試しメイク機能の提供 – ロレアル

フランスの化粧品大手「ロレアル」は、AR(拡張現実)技術を活用したバーチャルメイクのサービスを提供しています。

このサービスは、スマホのカメラや写真アルバムを通じて、ユーザーの顔に仮想的にメイクを施すことができるものです。

ユーザーは、ロレアルの様々な化粧品を試すことができ、リップカラーやアイシャドウなどの色を瞬時に変更し、実際に購入する前にどのような見た目になるかを確認できます。

このバーチャルメイクサービスは、リアルタイムで高精度なメイクアップのシミュレーションを可能にし、ユーザーに新しいショッピング体験を提供しています。

また、オンラインでの化粧品購入の際の不安を軽減し、より満足度の高い購買をサポートしている点も魅力です。

ロレアル バーチャルメイク ウェブサイ

AR(拡張現実)技術を活用したカタログは、従来の紙ベースのカタログに比べて、顧客に対してより鮮明でインタラクティブな体験を提供します。ここでは、ARカタログの事例を3つご紹介します。

IKEAのAR家具配置シミュレーター搭載アプリ「IkeaPlace」

北欧のグローバル家具ブランド・IKEAですが、以前よりARや3D、VR技術を活用した販促に取り組んでおり、ECでは多くの商品をARで試し置きできます。

また、「IKEA Place」というアプリでは「実際のお部屋の写真を撮影すると、配置されている家具を消去でき、IKEAの家具をバーチャルで配置して確認できる」という機能も。

常に先をいく販売手法に取り組むIKEAから目が離せません。

参考記事:イケアはスマホアプリにARを導入し、「家具の買い方」を根本から変える(Wied Japan)

手軽に導入できるコマース向けARサービス2選

ここからは、各企業が利用するARサービスを紹介していきます。

ニトリも導入!コマース向けARサービス「RITTAI」(Forgers社)

Forgersは、小売・EコマースのAR/VRサービス「RITTAI」を提供しています。

ARによる家具や家電、カーテンなどのの試し置き機能をオンラインストアに搭載することで、ユーザーは家具のサイズや色合いを購入前に自宅で事前シミュレーションすることができ、安心して購入することができます。

主な導入先は、ニトリ、ニッセン、イトーキ、ベイクルーズ、柏木工など。企業規模問わず多くのシーンで利用されています。

また、既存の国内WebARサービスの中では唯一、1つのURLでiOS端末・Android端末・PC端末に対応しているため、ほぼ全てのユーザーにAR体験を提供することが可能です。

クラウドサーカス株式会社:プロモーションでの利用実績多数

画像出典:クラウドサーカス
  • 会社概要: クラウドサーカスは、企業向けにAR・MRソリューションを提供する企業です
  • 事業内容: 特に企業のプロモーションやブランディング向けのAR・MRコンテンツ制作に強みがあり、クリエイティブな視点を活かしたサービス提供が特徴です
  • 開発実績: ARアプリ「COCOAR」/WebAR「LESSAR」などのARマーケティングツールの開発

Shopify – ECのCMS内にAR機能を搭載(一部制限あり)

EC構築サービス・Shopifyは、一部のフレームワークではARを手軽に利用できるようになっています。

商品登録時に他のデータと同様に3Dデータをコンテンツとして登録することで、自動的に商品ページ内にAR機能を導入することができます。

HORNE、Spikeball、INTENSEなどさまざまなブランドが活用しており、導入ジャンルはバッグ・家具・自転車など多岐に渡ります。

Shopify側の導入に向けたQ&Aやエラー対応などのカスタマーサポートは手薄いため、すでに3DやAR施策になれているご担当者様向けのサービスでしょう、

詳しくはこちら

今後の小売業界でのAR活用の展望

今後の小売業界でのAR活用について、2つの展望をご紹介します。

1.ARによる商品紹介やプロモーションで購買意欲や来店意欲を高める

将来の小売業界では、ARを活用して店舗体験を一層インタラクティブにすることが期待されています。

例えば、顧客が店舗に入ると、AR表示によって個々の顧客の嗜好や購買履歴に基づいた商品情報やプロモーションがリアルタイムで提供されます。

顧客はスマートフォンやARグラスを通して、製品の仮想デモンストレーションを見たり、カスタマイズオプションを試したりできます。

このような体験は、顧客の購買意欲を高めるだけでなく、店舗への足を運ぶ動機付けとなります。

2.パーソナライズされたARショッピングアシストで顧客満足度が向上する

AR技術の進化に伴い、パーソナライズされたショッピングアシスタントの実現が期待されています。

顧客がARデバイスを利用することで、個々に合わせた商品の提案やスタイリングアドバイスが可能になります。

例えば、衣類店では、ARミラーが顧客の体型や好みに合わせて衣服を仮想試着させることができます。

また、食品店では、顧客の健康状態や好みに合わせた食材の提案が行われるでしょう。

このようなパーソナライズされたサービスは、顧客の満足度を大幅に向上させることが期待されます。

これらの展望は、小売業界においてARが単なるガジェットではなく、顧客体験を根本から変革する重要なツールとしての地位を確立することを示唆しています。

顧客との接点を深め、購買体験を豊かにするこれらの技術は、小売業界の未来を形作る重要な要素となるでしょう。

まとめ

本記事では、小売業界におけるAR(拡張現実)技術の活用法とその事例に焦点を当てました。

AR技術がいかに顧客体験を豊かにし、商品情報の提供を革新するか、お分かり頂けたでしょうか。

本記事が、小売業界においてARを導入する際の参考になれば幸いです。

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