三井不動産や東急不動産も活用!|不動産業界のAR・VR活用事例から学ぶメリット・導入効果
不動産業界では、人手不足による抜本的な生産性向上やコロナ禍を経ての影響を受けてのオンライン需要の高まりなどから、新しい技術/ITを適応させた事業推進が急務とされています。
特にVR・ARは不動産業界との相性が良い手法であると注目を浴びており、三井不動産や東急不動産などの大手企業も次々に活用し、ビジネスへの活用を狙っています。
そこで今回の記事では、不動産業界におけるVR・ARを活用した事例やサービスをまとめて解説します!
「不動産業界のVR・AR活用の具体的なイメージが沸かない」「活用におけるメリットを正確に把握したい」という悩みを解決できるように丁寧に解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
- 1. 前提:不動産業界の事業内容について
- 2. 都市・ビル開発事業におけるVR・AR活用
- 2.1. 関係者や市民との合意形成に活躍|長野県茅野駅前再開発におけるVR活用
- 2.2. CADやBIMをAR/MRみえる化ソリューション『Mixpace』
- 2.3. 大規模な都市開発をVRでシミュレーション『VR City Viewer』
- 3. 賃貸管理・流通事業におけるVR・AR活用事例
- 3.1. 【三井不動産】愛知県名古屋市の久屋大通公園を使った、VRバーチャル店舗×リアルの新顧客体験
- 3.2. 【東急不動産】VRモデルルームで完結する新時代の不動産購買体験
- 3.3. Webで簡単にインテリアや内装のシミュレーションができる『RITTAI ROOM』
- 3.4. 360度画像で営業効率アップに貢献『THETA Biz』
- 4. 商業施設・ビルのメンテナンス業務におけるVR・AR活用事例
- 4.1. 3Dデータを活用した、非常に分かりやすい手順書や取扱説明書を作成できるWebマニュアル『RITTAI MANUAL』
- 4.2. MR技術を活用した遠隔作業支援ができる『NTT XR Real Support』
- 5. 今後の不動産業界でのVR・AR活用の展望
- 6. 最後に
前提:不動産業界の事業内容について
不動産業界では多岐にわたる事業が存在しますが、代表的なものは以下になります。
- 都市の再開発や商業施設やビル、マンション、リゾート施設などを開発する『都市・ビル開発事業』
- 戸建て・マンション・オフィスビルなどの売買や賃貸を行う『流通事業』
- 開発した施設や再開発した都市の運営・管理を行う『賃貸管理事業』『メンテナンス事業』
それぞれの事業の課題に対してVR・ARが活用されているので、早速業務ごとの事例やサービスを見ていきましょう。
また、不動産には建設や建築関係が関わってきますが、建築業界・建設業界のAR・MRの活用事例については別の記事にまとめているので、ぜひご覧ください。
※関連記事:【建築・建設業界のAR/MR活用事例】メリットや導入する際のポイントを解説!
また、ハウスメーカー・工務店・設計事務所などの住宅・リフォーム業界におけるVR・AR活用はこちらの記事をご参照ください。
※関連記事:住宅/リフォームのVR提案に!間取りや部屋レイアウト3Dシミュレーションサービス6選
都市・ビル開発事業におけるVR・AR活用
まずは都市・ビル開発事業におけるVR・AR活用事例やサービスを紹介いたします。
関係者や市民との合意形成に活躍|長野県茅野駅前再開発におけるVR活用
都市開発において、市民への説明や合意形成は非常に重要です。ただ、市民の方は図面の読み方などを知らず、これまでの図面だけでのご説明では具体的なイメージを持てない場合が多いです。
その認識の齟齬により問題やクレームが発生することもあります。
そこで、長野県茅野市では、都市可視化の情報基盤を元に作成されたVR技術を活用した駅前の再開発を行いました。
具体的には、VRを活用して、PC内で再現された駅前の仮想空間を自由に動き回っていただき、設計図だけでは把握しづらかった空間の仕上がりを具体的にイメージしてもらいました。
その結果。関係者との協議や市民との合意形成に大いに役立ったようです。
CADやBIMをAR/MRみえる化ソリューション『Mixpace』
商業施設やビルなどの建築物の合意形成に使われているのがMRソリューションの「mixpace(ミクスペース)」です。
MRデバイスのHoloLens2やiPadなどでご利用でき、例えば、ビッグ測量設計株式会社が駅舎の屋根の改修工事や道路の開削工事における完成イメージの共有や作業確認に活用したことがあります。
これまでも都市開発やビル開発などでは建造物のデータを3D CAD・BIM(Building Information Modeling)などで作成されていました。
しかし、それらのツールで作成した既存の3Dモデルは非常に重く、そのツール内でデータが閉ざされることが多く、他の関係者への説明のために活用できていませんでした。
そこで、mixpaceは3Dデータを自動で変換することで、手軽にARを自社オペレーションに組み込むことができるようになります。
また、これらの3Dデータはローカルで保存せず、全てクラウドで管理しています。それにより、どの端末でどの場所にいてもmixpaceがあれば、出張先や営業先などでもすぐにARを用いたレビュー、プレゼンが行うことが可能です。
設計のために作ったデータを説明やプレゼンの場で使えるため、実際に3DCADやBIMのデータをお持ちで、活用の幅を広げたいとお考えの企業様は、mixpaceの導入を検討してもよいでしょう。
大規模な都市開発をVRでシミュレーション『VR City Viewer』
大規模な都市開発を事前にVRでシミュレーションし、イメージの理解や共有が簡単になるためのサービスがVR City Viewerです。
大規模な都市開発は特に多くの関係者や担当者が関わり、人数が多くなればなるほど細かい意思疎通が難しくなる傾向にあります。
また、広大な敷地での計画のため、計画した新しい街での具体的な課題を検討・検証で漏れが発生することも少なくないです。
これらの課題をVR City Viewerは解決します。構想段階の都市計画を仮想空間に構築し、街全体を俯瞰したり、歩行者目線で歩きまわることで複雑な都市計画を誰でもイメージできるようにします。また、交通の流れをシミュレートして利便性や安全を確認することもできます。
プロジェクトを見える化し、計画に関わる全ての人たちが、コミュニケーションを円滑に進めたい方には是非お勧めです。
賃貸管理・流通事業におけるVR・AR活用事例
次に、開発した施設や再開発した都市の運営・管理・販売などにおける、VR・ARの活用事例をご紹介します。
【三井不動産】愛知県名古屋市の久屋大通公園を使った、VRバーチャル店舗×リアルの新顧客体験
三井不動産が、Park-PFI制度※2によって開発したHisaya-odori Parkの指定管理者として、来園者や店舗のお客さまの利便性の向上と新たな価値を発信する場所をめざした様々な取り組みの中の1つです。
公園や店舗というリアルの場とデジタル空間を活用し「新たな顧客体験の創造」をめざすとともに、DXによるお客さまとの接点を強化する「Smart Customer Experience」(以下 Smart CX)の観点で共同実験を行います。
特徴としては、大きく2つ。
- 高精細な店舗空間をVR上で再現
実在する8店舗を高精度カメラで360°パノラマ撮影した映像でリアルに再現されたもので、お客さまのパソコンやスマートフォン、タブレットなどから体験でき、バーチャル空間上では店舗のサービス情報や動画コンテンツも視聴可能。 - 実店舗とバーチャル店舗の連携による価値創造
VR上での動きや行動のデータ、来園者層の属性や行動パターンを分析し、お客さまへのよりきめ細やかなサービス提供をめざすほか、出店者のお客さま接点の強化への有効性を検証。
これはあくまで実験的に行われたことですが、デジタルで集められたデータをもとに、多くのお客さまが自らの嗜好にあった店舗で飲食・ショッピングなどを安心安全に楽しめる、にぎわいと魅力にあふれた空間形成を目指す施策を常に取り組んでいくと考えられます。リアルとバーチャルの融合による新しい顧客体験や価値の創出・向上を検討していく流れは続いていくでしょう。
【東急不動産】VRモデルルームで完結する新時代の不動産購買体験
内見や内覧とは非常にVRとの親和性が高く、様々な会社が取り組んでいます。その中でも今回は東急不動産の事例をご紹介します。
東急不動産は、完成前のマンションをご検討いただくお客様の利便性向上を図るため、複数の家具メーカーと連携し、実在家具のCGを配した全51プランのVRモデルルーム(バーチャルモデルルーム)を開発しました。
このVRモデルルームは複数人が同時に参加できるものであり、家族や夫婦と販売人が一緒にVR空間内を歩き回れることで、現場に内見する必要がなくなります。
また、従来の現地での内見の際には家具などが配置されていないことも多いため、家具が置かれているVRモデルルームの方が生活イメージが湧きやすく、より購入検討しやすくなっています。
よくVRで見た空間と実際の空間が異なってクレームが来るのでは?と考える方もいらっしゃるかと思いますが、かなり高精細に作られているため、実物との違いもそこまでありません。
実際にこのVRのみで購入を判断された方もいらっしゃるようです。
入居予定者は現地内見の回数を減らすことができ、VRモデルルーム上で物件の隅々まで見ることが可能なので、十分な確認ができるまでVR内覧・内見を行い、本当に興味がある物件のみ実際の現地内見を行うことができます。これにより、営業担当者の移動時間を大幅に削減できます。
人手不足で生産性を高めるために、内見業務の回数と時間を削減でき、確度が高い人に対してアプローチしやすくなる使い方で、非常に注目を集めています。
Webで簡単にインテリアや内装のシミュレーションができる『RITTAI ROOM』
ビルや商業施設の店舗の内装・デザインを作る際に利用できる3Dシミュレーターも需要が高まっています。そのような時に使用できるサービスとして、インテリア・住宅・リフォーム業界向け3D空間シミュレーションツール「RITTAI ROOM」があります。
3D・VR/AR開発スタートアップ・株式会社Forgersが提供しているサービスであり、先日ニトリ社も導入を発表しました。
※ニトリのリリースはこちら
このサービスでは、以下のような手軽に操作できるシミュレーション画面を使って間取りを作成し、インテリアを配置することで、3D空間を作り上げることができます。
上記のような画面で制作した空間は「高精細VRビューモード」で高画質レンダリングされた状態で視聴することができるため、ユーザーに対してよりリアルに空間のイメージを伝えられる点が強みです。
例えば、入居者がまだ退去しておらず内見ができない場合でも、物件を仮想空間に再現することでいつでも案内ができ、空きテナントの期間を極力短くすることができます。また、商業施設のテナント営業や店舗デザインなど、様々なシーンでご利用できるサービスになっています。
RITTAI ROOMのURL:https://rittai-room.forgers.co.jp/
360度画像で営業効率アップに貢献『THETA Biz』
3Dデータを持っておらず、一から作成するのが大変という企業様向けに便利なのが「THETA Biz」です。
このサービスはリコーが提供する法人向けのクラウドサービスですが、RICOH THETAの360度パノラマカメラを使用して撮影した画像を保存し、企業のウェブサイト上で簡単に表示できるようにすることが特徴です。ユーザーは、Webサイトに直接埋め込むことも、リンクを通じて共有することも可能です。これにより、不動産の仮想内見や観光地紹介などを低コストで実現することができます。
このサービスを活用することで、物理的な距離の制約を越えて情報を提供できるため、顧客エンゲージメントと販売機会の向上に寄与しています (THETA | RICOH360) (home)。
商業施設・ビルのメンテナンス業務におけるVR・AR活用事例
ビルや商業施設では常々メンテナンスや改修が行われています。ただ、このメンテナンス業務では技術者の高齢化と人員不足が深刻化しています。
現場で働く必要があるものの、後輩や若手を育成する必要がある、という状況にVRやARが活用されています。具体的な事例やサービスを紹介します。
3Dデータを活用した、非常に分かりやすい手順書や取扱説明書を作成できるWebマニュアル『RITTAI MANUAL』
施設の機材や備品などが故障した際に、即座にメンテナンスをする必要が出てくる場合があります。
そのような時に使えるサービスがこのRITTAI MANUALです。画面の左側に3Dモデルを表示し、自由に拡大縮小、画面移動などが可能です。
3Dデータや画像・動画を活用したデジタルマニュアルを作成できるため、これまでの紙やExcel・Wordなどの手順書よりも細部を細かく確認でき、URLでの共有もできるため、現場でタブレットやスマホでサクッと確認することが可能です。
他にも以下のような特徴を持っているため、マニュアル作成ツールとしてだけでなく、営業資料やプレゼン資料としても活用できます。
- 製品機能の直感的理解: Webブラウザで利用でき、3Dモデルや動画を用いることで、製品の機能や操作方法を直感的に理解できます。これにより、顧客は製品の特徴をより深く把握することができます。
- 営業人員のプレゼンテーション品質向上: 営業人員は、RITTAI MANUALを利用することで、製品の機能や使い方をより分かりやすく伝えることができ、プレゼンテーションの品質向上と顧客の理解や満足度が高まります。
- 故障時の迅速な対応: 製品の故障や問題発生時に、修理や対応手順を分かりやすく案内できるため、ユーザーは自身で迅速に対処することが可能となり、顧客サポートの効率化が図られます。
製造・半導体業界向け電子マニュアルツール『RITTAI MANUAL』ウェブサイト
MR技術を活用した遠隔作業支援ができる『NTT XR Real Support』
NTT XR Real Supportは、「技術伝承」「人手不足」「安全確保」等の課題を解決するMR技術を用いた遠隔支援ソリューションです。
HoloLens2とPC、iPadとPCで遠隔から指示ができるため、これまで現場に居なければならなかった作業員を減らすことができます。さらに、遠隔の1名が現地の2拠点を同時に支援する「並行支援」の実現により、人員削減・移動コスト削減など、さらなる効率化が可能です。
サービスページ:https://www.nttqonoq.com/service/real-support/
今後の不動産業界でのVR・AR活用の展望
技術伝承・人手不足・1人当たりの生産性向上など、非常に多くの課題を抱えている不動産業界では、これまで紹介してきたようなVR・ARを活用した事例やサービスがより増えていくでしょう。それぞれの活用方法には基本的にメリットとデメリットの両方が存在しますが、それらを正確に把握したうえでビジネスを進めていくことが重要です。
顧客との接点を増やしつつ、より確度の高いお客様にアプローチするため、また契約率や顧客単価の向上、現場スタッフのコスト削減、トレーニングの効率化など、VR・ARは今後不動産業界により一層の価値をもたらします。
※関連記事:ARとは?定義・技術の仕組み・VR/MRとの違い・ビジネス事例などを解説
最後に
本記事では不動産文脈における様々なVR・ARの活用方法やユースケースを紹介してきました。
本メディア「Forgers Column」運営元の株式会社Forgersは不動産向けVR・ARアプリケーションの企画開発や自社サービスのご活用に関する相談を初回無料で承っています。
- VRやARを活用して業務の効率化や改善を行いたい
- VRやARを用いて施設の集客や回遊率を高めたい
- RITTAI ROOMやRITTAI MANUALの活用方法を相談したい
上記のような相談やその他VR・AR活用に興味がありましたらこちらからお問い合わせください。
また、他の業界におけるVR・ARの活用事例も紹介していますので、ぜひご覧ください。