【スポーツ業界のAR/VR活用事例】メリットや導入ポイントを解説!

スポーツ業界に革命をもたらすAR/VR技術。これらは単なる流行ではなく、効率的で効果的なトレーニングやファン満足度の向上を実現する鍵となっています。

本記事では、AR/VR技術がスポーツ業界でどのように活用され、どんなメリットをもたらすのかを解説します。

「ARやVRをスポーツ業界でどのように活用すればいいのかわからない」という悩みを持っている方はぜひ一読ください!

AR/VRの基礎知識

まずは、ARとVRについて簡単にご説明します。以下の表では、ARとVRの特徴と、スポーツでの活用シーンを整理しています。

技術特徴スポーツでの活用シーン
AR(拡張現実)実際の環境にデジタル情報を重ね合わせる技術観戦体験の向上、選手のパフォーマンス分析
VR(仮想現実)完全に仮想された環境に没入する技術トレーニング、戦術のシミュレーション

AR(拡張現実)とは

AR技術は、現実世界にデジタル情報を重ね合わせる技術です。

この特性を活かして、スポーツ観戦では、選手に関する統計や情報をリアルタイムで画面上に重ね、より深い理解と観戦体験を提供します。

また、選手のトレーニングにおいては、パフォーマンス分析やフォーム改善のために、実際の動きにデジタル情報を重ね合わせ、詳細なフィードバックを提供することができます。

このようにARは、現実世界をベースにしてデジタル情報を加えることで、スポーツの見方や選手のトレーニング方法に新しい次元をもたらしています。

VR(仮想現実)とは

VR技術は、ユーザーを完全に仮想の世界に没入させます。

この特性を活かして、スポーツトレーニングにおいては、実際の環境を模倣した仮想空間でのトレーニングが可能になります。

選手は、リアルな競技環境を再現した中で、技術の習得や戦術のシミュレーションを行うことができ、実際の試合におけるプレッシャーを体験することも可能です。

また、VRは選手だけでなく、ファンに対しても、実際に現場にいるかのような観戦体験を提供することができ、スポーツの楽しみ方を大きく広げています。

スポーツ業界の課題をAR/VRの導入で解決可能

ここでは、スポーツ業界の課題をAR/VRがどのように解決するのかについて詳細に解説します。

1.様々な環境をVRシミュレーションすることで、トレーニング効率とパフォーマンスが向上する

スポーツ選手が最高のパフォーマンスを発揮するためには、高度なトレーニングメニューや機器の準備が不可欠です。

しかし、現実のトレーニング環境では、限られたリソース、特定の技術や戦術の習得に対する制約、そして物理的なリスクや怪我の可能性など、多くの障壁が存在します。

また、選手個々のスキルレベルやニーズに合わせたカスタマイズされたトレーニングプログラムの提供も難しい場合が多く、効率的かつ効果的なトレーニング方法の模索は、業界全体の課題となっています。

こういった課題に対し、VR技術を利用することで、選手は実際の環境を完全に模倣した仮想空間でトレーニングを行うことができます。

例えば、VRを使用して、サッカー選手がペナルティキックの精度を向上させるためのトレーニングを行う場合、様々な天候条件やプレッシャーの下でのキックを何度も繰り返し練習することが可能になります。

これにより、物理的なリスクや場所の制限なしに、より多くの反復練習とシミュレーションが実現し、最終的にはパフォーマンスの向上につながります。

2.自宅でも目の前で観戦しているかのような没入感が味わえる

スポーツイベントの観戦体験は、ファンにとって重要な要素です。

しかし、現在の観戦体験は、物理的な距離や場所、チケットの入手困難さなどによって限定されがちです。

さらに、観戦中に得られる情報やインタラクションの機会も限られており、ファンがより没入感を持って試合を楽しむことに対する要求は、日増しに高まっています。

ここで、AR/VR技術は観戦体験を革新します。

VRを通じて、ファンは自宅にいながらにして、実際にスタジアムにいるかのような没入感を体験することが可能になります。

例えば、VRゴーグルを通じて、コートサイドやピッチ上の選手の視点から試合を観戦することができます。

一方、AR技術は、実際に試合を観戦している際に、スマートフォンやタブレットを通じて選手の統計情報やリプレイをリアルタイムで提供することができ、より深い理解を生み出します。

スポーツ業界のAR・VR活用事例5選

ここからは、スポーツ業界におけるAR・VR活用事例を5つご紹介します。

1.NTTデータ-VR打撃トレーニングシステム「V-BALLER™」

株式会社NTTデータは、VR技術を活用した打撃トレーニングシステム「V-BALLER™」を、プロ野球選手だけでなく、アマチュア選手にも提供を開始しました。

このシステムは、実投手の投球をVR空間上でリアルに再現し、打者のスイング傾向やクセを客観的に分析することが可能です。

特に、新たに追加された機能により、頭、バット、腰の動きをセンシングし、球種や球速別にスイングのデータを可視化、分析することで、選手個々の技術向上を支援します。

この取り組みは、従来の打撃トレーニングの課題を克服し、選手がいつでもどこでも効果的な練習を行えるようにすることを可能にします。

2.ソフトバンク-5GとAR・VRを組み合わせたバスケ観戦

ソフトバンクは、5GとVR・ARを組み合わせ、新たなスポーツ観戦体験を提供しています。

特に、バスケットゴールの両サイドとコートサイドのテーブルオフィシャル席からの映像を用いた「VR試合観戦」は、VRゴーグルを通して実際に目の前で選手がプレーしているかのような立体映像を楽しむことができます。

この技術により、通常では得られないアングルからの観戦が可能となり、まるで現場にいるかのような臨場感ある体験が実現しています。

また、「ARホログラム」技術は、自宅のテーブル上で立体的なバスケットボールの試合を楽しむことを可能にします。

タブレットで特定のQRコードを読み取ると、3Dホログラムで試合が浮かび上がり、どのアングルからでも立体的に試合を観戦できます。

この技術は、まるで映画のような未来的な体験を自宅で実現させ、スポーツ観戦の新たな形を提示しています。

3.エアレース「AIR RACE X」でのAR活用

2023年10月15日、渋谷で開催された「AIR RACE X」は、AR技術を活用した世界初のエアレース観戦体験を提供しました。

このレースでは、パイロットたちは世界各地でフライトし、そのパフォーマンスはリモートでタイム競争が行われます。

一方、観客はAR技術を通じて、これらのフライトをまるで目の前で起こっているかのように観戦することができます。

特に渋谷での決勝トーナメントは、街中が仮想空間のレースコースに変わり、パイロットたちのフライトがリアルタイムで観戦可能となる革新的な試みでした。

リアルメタバースプラットフォーム「STYLY」を利用することで、観客はスマートフォンやXRデバイスを使って、渋谷のど真ん中でエアレース機が駆け抜ける様子を体験できます。

この技術は、従来のエアレース観戦とは一線を画し、時間と空間の制約を超えた新しい観戦スタイルを実現しています。

4.対戦型ARスポーツ「HADO」

「HADO」とは、プレイヤーがヘッドマウントディスプレイとアームセンサーを装着し、エナジーボールやシールドを発動することができる対戦型ARスポーツです。

このスポーツは、魔法のような技を現実世界で実現することができる点、身体的接触がないため安全に楽しめる点、チーム戦略が勝敗を左右する点など、多くの特徴を持っています。

公式ルールでは3対3のチーム戦で、80秒間の試合中に相手にエナジーボールを当ててライフを奪うことで勝敗が決まります。

日本国内では、お台場をはじめとする全国13箇所で体験でき、ゲーム開始前にはエナジーボールやシールドのカスタマイズが可能で、自分のプレースタイルやチーム戦略に合わせた調整がゲームの勝利に繋がります。

これらの要素が組み合わさり、「HADO」は「次世代のスポーツ」として注目を集めています。プレイヤーだけでなく、観客もディスプレイを通じて試合を楽しむことができるため、幅広い層に体験の機会を提供しています。

HADO 公式ウェブサイト

5.ドライビングゲーム「グランツーリスモ」のVR対応

PS5版のグランツーリスモ7は、PSVR2を使用して圧倒的な没入感のあるレース体験を提供します。

PSVR2を装着し、グランツーリスモ7をプレイすると、レースのワールドマップやメニュー画面が目の前に広がる大きなディスプレイのように表示され、レース開始と共にVRモードに切り替わります。

これにより、まるで現実世界で車を運転しているかのようなリアリズムを提供します。

VRモードでは、ドライバー視点が本当のドライバー視点となり、ハンドルや計器類、シフトレバー、フットペダルなどが目の前に現れます。

PSVR2の高画質OLED 4K HDRディスプレイと90Hz/120Hzのリフレッシュレートにより、流れる景色が非常に滑らかに表示され、加速時にはGがかかったような錯覚を覚えるほどです。

また、カーブを曲がる際には、実際の運転と同様に曲がる先を見ることができるなど、VRによって運転体験のリアリティが格段に向上しています。

スポーツ業界でAR/VRを導入する際の課題点・検討事項

スポーツ業界におけるAR/VR技術の導入は多くのメリットをもたらしますが、同時にいくつかの課題点や検討事項が存在します。ここでは、主に3つのポイントに焦点を当てて説明します。

1.AR/VRデバイスや開発の費用は高く、専門知識が求められる

AR/VR技術の導入には、高度なハードウェア、ソフトウェア、そして専門知識が必要となります。

特に、スポーツ業界においては、リアルタイムでのパフォーマンス分析やトレーニングシミュレーションを行うためには、高品質のグラフィックスと低遅延の技術が求められます。

例えば、VRを利用したサッカートレーニングシステムを開発する場合、実際のプレイ環境を精密に再現するためには、高価なVR装置や開発にかかるコストが大きな課題となります。

このような高い初期投資は、特に中小規模のスポーツ団体やチームにとって大きな障壁となり得ます。

2.ユーザーにとって操作しやすく、快適な映像体験を提供する

ユーザー体験の質とそのアクセシビリティも重要な検討事項です。

技術がユーザーに受け入れられるためには、直感的で没入感のある体験を提供する必要があります。

例えば、VRを通じて観戦体験を提供する際、リアルタイムでの映像伝送遅延や画質の問題は、ユーザーの満足度を大きく左右します。

また、装置の着用による不快感や使用方法の複雑さも、導入の障壁となり得ます。

さらに、全てのファンが最新のAR/VR技術にアクセスできるわけではなく、技術的なアクセシビリティの向上も課題となります。

3.プライバシー保護とセキュリティ対策を万全にする

AR/VR技術をスポーツトレーニングや観戦に導入することで、選手やファンから大量のデータが収集されます。

これには、選手のパフォーマンスデータ、個人の視聴習慣、さらには生体情報が含まれることもあります。

これらのデータの取り扱いには、厳格なプライバシー保護とセキュリティ対策が必要となります。

例えば、VRを用いたファンの観戦体験では、個人の好みや行動が詳細に追跡され、個人情報の漏洩につながるリスクがあります。

このような課題に対処するためには、透明性のあるデータ管理ポリシーと、強固なセキュリティシステムの構築が求められます。

今後のスポーツ業界でのAR/VR活用の展望/考察

ここからは、将来のスポーツ業界でのAR・VR活用について2つのトピックを考察します。

1.AIとの融合により、より最適なトレーニングやリハビリテーションが実現する

将来的には、AR・VR技術はスポーツトレーニングやリハビリテーションを大きく変革するでしょう。

例えば、AIと組み合わせたVRトレーニングシステムが開発され、アスリートの動きやパフォーマンスをリアルタイムで分析し、個々のニーズに合わせたカスタマイズされたトレーニングプログラムを提供します。

このシステムは、選手の技術的なスキルはもちろん、精神的な強さや集中力の向上にも貢献し、例えば精密なバイオフィードバックを通じて、選手が自身の心拍数や呼吸パターンを調整するトレーニングが可能になります。

さらに、重傷からの復帰を目指すアスリートのリハビリテーションにおいても、実際の運動負荷をかけることなく仮想環境での運動を行い、より安全かつ効果的な回復をサポートします。

2.アバターを通じて観戦に参加し、「試合を一緒に作る」楽しみ方が普及する

ファンエンゲージメントの面では、AR/VR技術は観戦体験を根本から変える可能性を秘めています。

将来的には、AR/VRを通じて、ファンが自宅からでも選手と直接インタラクションする体験が可能になるかもしれません。

例えば、VRプラットフォーム上でのバーチャルスポーツイベントが開催され、ファンがアバターを通じて実際にイベントに参加し、選手や他のファンとコミュニケーションを取りながら試合を観戦できるようになります。

また、AR技術を使って、リアルタイムで選手のデータや統計を観戦中の画面上に表示し、試合の深い理解や戦略的な観点からの楽しみ方を提供します。

このようにして、ファンはただ観戦するだけでなく、「試合を一緒に作る存在」として積極的に関与することができるようになります。

まとめ

本記事では、スポーツ業界におけるAR/VR技術の活用事例、業界が抱える課題、導入のメリット、そして導入時の課題点と検討事項について詳しく掘り下げました。

AR/VR技術は、スポーツ業界において革命的な影響をもたらし続けることが期待されます。

今後の進歩に目が離せません!

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