スマホやタブレットの3Dスキャンアプリを解説|iPad/iPhone/Androidや産業専用3Dスキャナーを幅広く紹介
VR/ARの広まりや3Dプリンターも普及し始めた昨今、3Dデータの需要が高くなってきています。
3Dモデリングなどに加えて、3Dデータを簡単に制作できるというメリットから3Dスキャンが注目を集めています。
本記事では、3Dスキャンの基本原理や用途、そして技術の進化が著しいスマホやタブレットのスキャンアプリを中心に詳しく解説します。
- 1. 3Dスキャンの基礎知識
- 2. 3Dスキャンの歴史と発展
- 3. iPadやiPhone、Androidでも3Dスキャンが可能|3Dスキャンアプリ
- 3.1. LiDARとは
- 4. iPhone3Dスキャンアプリによる3Dモデル作成の流れ
- 4.1. ①対象物の準備と設定
- 4.2. ②スキャンアプリの起動と設定
- 4.3. ③スキャンの実施
- 4.4. ④データの処理
- 4.5. ⑤3Dモデルの調整と保存
- 4.6. ⑥モデルの活用
- 5. iPhoneとiPadで使える3Dスキャンアプリ
- 5.1. RITTAI SCAN
- 5.2. Scaniverse
- 5.3. Polycam
- 5.4. 3D Scanner App
- 5.5. Scandy Pro
- 5.6. SiteScape
- 6. Androidで使える3Dスキャンアプリ
- 6.1. Qlone
- 6.2. Trnio
- 7. 専用の3Dスキャナーの特徴と種類
- 7.1. 接触式3Dスキャナー
- 7.2. 非接触式3Dスキャナー
- 7.3. ハンディタイプ3Dスキャナー
- 7.4. 産業用3Dスキャナー
- 7.5. 医療用3Dスキャナー
- 8. まとめ
3Dスキャンの基礎知識
3Dスキャンとは、対象物の形状や表面情報をデジタルデータとして取得する技術です。
対象物に光やレーザーを照射し、その反射光やレーザー光の情報を取得することで、対象物の3次元形状を再現します。
この技術は、人間の目で物体を認識する仕組みと似ており、光が物体に当たって反射する様子を捉えることで、物体の形状を理解しています。
3Dスキャンの歴史と発展
3Dスキャンの歴史は、1960年代に遡ります。
初期の3Dスキャナーは計測器を活用し、主に航空機や自動車の設計に用いられていました。
1980年代には、コンピュータ技術の発展に伴い計算速度が高まったことで、3Dスキャナーの精度や性能が向上し、より幅広い分野で利用されるようになりました。
また、スキャナーの小型化とレーザーの精度向上も相まって、大型の物体を高精度でスキャンできるようになってきました。
近年では、VR/ARや3Dプリンターの発展とともに、バーチャルでの利用用途も生まれ、3Dスキャンの需要がさらに高まっています。
現在では3Dスキャン用の専用スキャナーが様々展開されたり、iPadやiPhoneなどのタブレットやスマホでも簡単にかつ高精度な3Dデータを制作できるようになってきました。
iPadやiPhone、Androidでも3Dスキャンが可能|3Dスキャンアプリ
3Dスキャンアプリは、スマートフォンやタブレットのカメラやLiDARセンサーを利用して、物体や空間をデジタルデータとして3Dモデル化するツールです。
以前は専門3Dスキャナーが必要でしたが、iPhone、iPad、Androidなど、現代のスマートフォンやタブレットで手軽に3Dスキャンを行うことができるようになりました。
これにより3Dスキャンの大衆化が一層進んでおり、建築、デザイン、エンターテイメント、文化財の保存など、さまざまな分野で利用され始めています。
特に、iPad ProやiPhone 12 Pro以降に搭載されたLiDARスキャナーは、物体の形状を高精度にデジタル化するための強力なセンサーです。
LiDARとは
LiDAR(Light Detection and Ranging)は、レーザー光を使って物体までの距離を測定し、そのデータを元に3Dモデルを生成する技術です。
レーザーを発射し、その反射光が戻ってくるまでの時間(飛行時間)を計測することで、物体までの正確な距離を算出します。
このデータを多数取得することで、物体の形状を細かく再現することができます。
LiDARの特徴は、高速かつ高精度に3Dスキャンができる点です。
特に、複雑な形状や広範囲の対象物をスキャンする際にも有効で、スキャンしたデータをリアルタイムで処理できるため、即時に3Dモデルとして活用できます。
また、光の影響を受けにくいので、暗い場所でも精度の高いスキャンが可能です。これにより、建築や土木、エンターテイメント、文化財の保存など、多岐にわたる分野で広く利用されています。
iPhoneやiPadの一部のモデルに搭載されているLiDARスキャナーは、ユーザーが手軽にこの高度な技術を利用できることを可能にしており、アプリを通じてプロフェッショナルな3Dスキャンを日常的に行えるようになっています。
iPhone3Dスキャンアプリによる3Dモデル作成の流れ
iPhoneアプリを使って3Dスキャンを行い、3Dモデルが作成されるまでの主な流れをご紹介します。
①対象物の準備と設定
まず、スキャンしたい物体を準備し、周囲の環境を整えます。
LiDAR搭載のiPhone(iPhone 12以降のモデル)を使用する場合は、対象物が十分な光に照らされていることを確認し、スキャンの精度を高めるために、影や反射が少ない環境を作ることが重要です。
②スキャンアプリの起動と設定
次に、3Dスキャンアプリ(例: Polycam、Scaniverseなど)を起動し、スキャンモードを選択します。
アプリによってはスキャンの範囲や精度を設定できるので、スキャンの目的に合わせて選定します。
③スキャンの実施
iPhoneを使用して対象物の周りをゆっくりと動かしながら、スキャンを進めます。
動画を撮るように対象物の周りをぐるっとスキャンすることで、LiDARセンサーが対象物までの距離を測定し、物体の形状データをリアルタイムで取得します。(フォトグラメトリであれば動画を撮る形ではなく、様々な角度での多くの写真を撮影することで実現できます)
カメラが対象物全体を捉えられるよう、複数の角度から慎重にスキャンを行います。
アプリはスキャン範囲内のデータを取得し、3Dモデルを作成するための基礎データを収集します。
④データの処理
スキャンが完了すると、アプリ内でデータの処理が行われます。
LiDARセンサーで取得した距離データやカメラの画像データをもとに、アプリが自動的に3Dモデルを生成します。
このプロセスでは、複数の視点から取得したデータを統合し、対象物全体の3D形状を再現します。
⑤3Dモデルの調整と保存
生成された3Dモデルはアプリ内で表示され、ユーザーはモデルの詳細を確認できます。
必要に応じて、モデルの不要な部分を削除したり、欠損箇所を補完したりする編集が可能です。
完成した3Dモデルは、STL、OBJ、FBXなどの一般的な形式でエクスポートでき、3Dプリンターでの出力や他の3Dデザインソフトウェアでの利用が可能です。
⑥モデルの活用
最終的に、保存した3Dモデルはさまざまな用途に活用されます。
例えば、3Dプリンターで実物を作成したり、ゲームやAR/VRアプリで使用することができます。
また、共有機能を使って、プロジェクトチームやデザイナー、クライアントと3Dデータを簡単に共有することができます。
iPhoneとiPadで使える3Dスキャンアプリ
3Dスキャンをスマホやタブレットで実現する際に、どのようなアプリを使えばよいかをご紹介します。
RITTAI SCAN
本メディア運営元の(株)Forgersは、iPadやiPhoneで使用できる3Dスキャンアプリ「RITTAI SCAN」を開発・提供しています。
現地情報の調査や内装の3Dシミュレーションのために3Dデータをスキャンしたり、工場の設備やラインをスキャンすることができます。
LiDAR搭載のiOS端末(2020年以降に発売されたiPad Pro、iPhone 12以降のProモデル)を対応端末としています。
特徴としては、アプリで制作した3DデータをForgers社が提供する「RITTAI」や「RITTAI MANUAL」に適した形式で出力でき、簡単に連携することができます。
※関連記事:3Dマニュアル・手順書の作成と利用方法-技術継承や業務効率化ツール
工場のラインや設備・機材のスキャンを簡単に実現したいという企業のご担当者様は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。
Scaniverse
Scaniverseは、iPhoneやiPadで利用できるLiDARを活用した強力な3Dスキャンアプリです。
LiDARスキャナーを搭載したiPhoneやiPadでは、複雑な形状の物体を高精度でスキャンすることができ、建物や彫刻、さらには風景などの広範囲なスキャンにも対応しています。
Scaniverseの特徴は、リアルタイムでのスキャンプレビューが可能な点で、スキャンしたデータを即座に確認し、必要に応じて編集や調整ができる機能も備えています。
また、取得した3Dデータは、OBJやSTL、PLYなど、さまざまな形式でエクスポート可能で、3Dプリンティングやデザインツールでの活用も容易です。
さらに、無料版でも多機能が利用できるため、初心者からプロフェッショナルまで幅広いユーザーに対応しています。
Polycam
Polycamは、LiDARスキャナーを活用して高精度な3Dスキャンを行える人気のアプリです。
シンプルな操作で部屋や家具、彫刻などの複雑な形状をスキャンし、すぐに3Dモデルを作成できます。
作成したモデルはFBXやOBJなどの形式でエクスポート可能で、他の3Dソフトやプリンターで活用できます。
3D Scanner App
このアプリもiPadやiPhoneのLiDARを活用し、簡単にスキャンが可能です。
特に、建築や設計業務においては、部屋全体やオブジェクトをスキャンして、そのデータをすぐに設計ソフトに取り込むことができます。
スキャンデータはOBJやSTL形式で保存できるため、CADソフトとの連携もスムーズです。
Scandy Pro
Scandy Proは、iPhoneやiPadのLiDARセンサーを利用して、細部まで精密なスキャンを行うことができるアプリです。
特に顔のスキャンに強みがあり、キャラクターモデリングやARフィルター作成などにも応用できます。
無料版でも十分な機能を提供しているため、初心者にもおすすめです。
SiteScape
SiteScapeは、LiDARを利用して3Dスキャンを行うアプリで、タブレットでの広範囲スキャンに最適です。
点群スキャンをベースにしており、建築現場や大規模な屋外プロジェクトのスキャンにも対応し、迅速かつ精密な3Dモデルを作成することができます。
Androidで使える3Dスキャンアプリ
Androidでも高機能な3Dスキャンアプリが数多く存在し、iOSに引けを取らない性能を発揮しています。
特に、カメラだけでスキャンを行えるアプリが多く、Androidユーザーにも便利です。
Qlone
Qloneは、Androidでも利用できる簡単な3Dスキャンアプリです。
スマホカメラを使用して360度のスキャンを行い、物体を高精度でキャプチャできます。
スキャンしたデータは3Dプリンターで出力できるほか、OBJやSTL形式で保存して他の3Dソフトでも編集可能です。
Trnio
Trnioは、複数の写真を使ってフォトグラメトリで3Dモデルを生成するアプリです。
スマホカメラで撮影した画像をクラウドにアップロードし、高精度なスキャンデータを自動で作成します。
特別なハードウェアを必要とせず、日常的に使える3Dスキャンツールとして非常に便利です。
専用の3Dスキャナーの特徴と種類
スマートフォンやタブレットによる3Dスキャンが手軽である一方、より高精度でプロフェッショナルな用途に対応するためには、専用の3Dスキャナーが使用されます。
これらのスキャナーは、工業用途や医療分野、芸術・文化財保存などの専門的な分野でよく使われており、用途に応じていくつかの種類に分かれています。
接触式3Dスキャナー
接触式3Dスキャナーは、物体に直接触れて形状を測定するスキャナーです。三次元測定機とも呼ばれます。
プローブと呼ばれる触針が対象物に接触し、その位置データを取得して形状を再現します。
この方法は高精度な計測が可能ですが、スキャンに時間がかかることや、対象物に傷をつけるリスクがあるため、主に精密部品の測定や医療機器の製作に使われます。
非接触式3Dスキャナー
非接触式スキャナーは、レーザーや光を対象物に照射して、その反射データを基に形状を測定するタイプです。
物理的に対象物に触れずに測定できるため、繊細な物体や大きな構造物のスキャンに適しています。非接触式スキャナーには以下の主な方式があります。
- レーザースキャナー: レーザーを照射して、その反射光をカメラでキャプチャし、物体までの距離を計算して形状を再現します。この方式は、建築や地形測定、建物の3Dモデル作成に使われます。
- 構造光スキャナー: 対象物に格子状の光を投影し、その歪みをカメラで撮影して形状を測定します。構造光方式は、精度が高く、比較的安価なため、プロダクトデザインや文化財保存など幅広い用途に利用されています。
- 飛行時間スキャナー(ToF): レーザー光が対象物に当たって反射して戻ってくるまでの時間を測定し、距離を計算する方法です。この方法は広範囲のスキャンが可能で、地形や建物の測定に使われます。
ハンディタイプ3Dスキャナー
ハンディタイプの3Dスキャナーは、持ち運び可能で軽量なスキャナーです。
手軽にスキャンできる点が魅力で、現場作業やフィールドワークにおいて広く使われています。
多くのモデルは、レーザーや構造光を使用し、物体を簡単にスキャンして高精度なデータを取得できます。
建築設計やプロトタイプ製作、さらには教育現場でも活用されています。
産業用3Dスキャナー
産業用3Dスキャナーは、工業や製造分野での使用を目的に開発された高精度なスキャナーです。
これらは、工場の品質検査やリバースエンジニアリングに使われることが多く、非常に高精度かつ高耐久性を持っています。
大量生産品の検査や部品の寸法確認など、厳しい基準に基づいて正確にデータを取得します。
※製造での3D/XR活用について:【製造業・工場のAR/MR/VR活用事例】メリットや導入のポイントを解説
医療用3Dスキャナー
医療用3Dスキャナーは、患者の体の形状を3Dで記録し、義肢や補綴物の製作に利用されます。CTスキャンなども一種の3Dスキャンです。
また、整形外科や歯科では、骨の形状をスキャンして手術計画に役立てることもあります。
医療分野でのスキャナーは、患者に負担をかけずに精密なデータを取得できることが求められ、高い安全性が確保されています。
※関連記事:【医療分野におけるAR/MR/VR/メタバース】導入メリットや活用事例を紹介!
まとめ
スマートフォンやタブレットを使った3Dスキャン技術は、これまで専門的な機材が必要だった作業を、日常的に使用するデバイスで簡単に行えるようになりました。
iPhoneやiPadに搭載されたLiDAR技術は、プロフェッショナルな用途に応える高精度な3Dスキャンを提供し、アプリを通じて手軽に実現できるのが魅力です。
また、Androidや他のスマートフォン、タブレットでも強力なスキャンアプリが利用可能で、多様な分野での応用が進んでいます。
これからも技術の進化に伴い、スキャンの精度や使い勝手がさらに向上し、クリエイティブな可能性が広がっていくでしょう。
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