【3Dスキャンに必須なLiDAR】LiDARの定義・仕組み・活用事例・関連技術をご紹介
昨今現実空間を3Dデータ化するために、3Dスキャンが注目を浴びています。
3Dスキャンの精度を高めるための技術としてLiDARがあります。
今回はLiDARについて詳細を説明していきます。

- 1. LiDARとは?基本概念と仕組み
- 1.1. LiDARの定義
- 1.2. LiDARの歴史と発展
- 1.3. どのように距離を測定するのか?(ToF方式)
- 1.4. LiDARと他の測定技術(カメラ・レーダーとの違い)
- 2. LiDARの種類と技術的な違い
- 2.1. ToF(Time of Flight)方式
- 2.2. フェーズシフト方式
- 2.3. FMCW(周波数変調連続波)方式
- 2.4. 固定型かスキャン型か
- 2.4.1. 固定型LiDAR
- 2.4.2. スキャン型LiDAR
- 2.4.3. どの場面でどちらを使うべきか?
- 3. LiDARの活用分野と具体的な事例
- 3.1. 自動運転への応用
- 3.2. 3Dスキャン・測量・地図作成
- 3.3. AR/VRでの活用
- 3.4. 産業用途(建築・農業・災害対策)
- 4. 最新のLiDAR技術とトレンド
- 4.1. 小型化・低価格化の進展
- 4.2. スマートフォン搭載型LiDARの進化
- 5. まとめ
LiDARとは?基本概念と仕組み
LiDARの定義
LiDAR(Light Detection and Ranging)は、レーザー光を利用して対象物との距離を高精度に測定する技術です。
この技法はレーダー(Radar電波探知測距)に類似しており、レーダーの電波を光に置き換えたものがLiDARです。

この技術は、光の速度と時間を計測することで、物体までの距離を算出します。
レーザーパルスを発射し、その反射光をセンサーで検出することで、点群データとして3Dマップを作成することが可能です。
現在では学術で行くと地質学・地震学・大気物理学であったり、自動運転技術・AR/VR・測量・ロボティクス・建築業界など、多岐にわたる分野で活用されています。
LiDARの歴史と発展

LiDARの技術は1960年代に航空測量の分野で初めて活用されました。
当初は軍事用途や宇宙開発において重要な技術でしたが、その後、技術の発展とコストの低下により、自動車、スマートフォン、建築などの一般用途にも広がりました。
特に近年では、AppleがiPhoneやiPadにLiDARを搭載したことで、個人でも高精度な3Dスキャンが可能になり、さらに活用の幅が広がると注目を集めています。
どのように距離を測定するのか?(ToF方式)
LiDARの多くはTime of Flight(ToF)方式を採用しています。
この方式では、レーザー光が対象物に当たり、反射して戻ってくるまでの時間を測定することで距離を算出します。
光の速度(約299,792,458 m/s)を基に、非常に短時間で精度の高い測定が可能です。
この原理を利用して、数百万もの測定点を取得し、3Dマップとして構築することができます。
LiDARと他の測定技術(カメラ・レーダーとの違い)
LiDARは他の測定技術と比較して、特有のメリットとデメリットがあります。
- LiDAR:高精度な3Dマッピングが可能で、夜間や暗所でも動作するが、専用の機材やデバイスなどが必要なためコストが高い。
- カメラ:RGB情報を取得できるため、物体の認識や分類が得意だが、深度測定には不向き。
- レーダー:長距離測定が可能で、悪天候でも動作するが、分解能が低く詳細な形状を取得しにくい。
LiDARの種類と技術的な違い

ToF(Time of Flight)方式
ToF方式は最も一般的なLiDAR技術で、レーザーパルスを発射し、その往復時間を計測して距離を算出します。この方式はシンプルで広く利用されていますが、高解像度のデータを取得するためには、高速で正確なセンサーが必要となります。特に、自動運転や測量などの分野で多く採用されています。
フェーズシフト方式
フェーズシフト方式では、光の波長の位相の変化を利用して距離を測定します。この方式はToF方式に比べて精度が高いのが特徴です。特に、建築業界や精密測定を要する分野で活用されています。
FMCW(周波数変調連続波)方式
FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式は、ドップラー効果を利用して距離と速度を同時に測定する方式です。これにより、対象物が移動している場合でも正確な位置情報を取得できます。この技術は次世代の自動運転システムでの活用が期待されています。
固定型かスキャン型か
LiDARには、固定型とスキャン型の2種類が存在します。
固定型LiDAR
固定型LiDARは特定の方向にレーザーを照射し、固定された位置から対象物の距離や形状を測定するタイプです。
このタイプは、高精度な測定が求められる場面で使用されます。
たとえば、工場の生産ラインでの部品検査、建築現場での精密測定、交通監視システムなどで活用されます。
固定型の利点は、動作が安定し、消費電力が少ないことですが、測定範囲が限定されるため、広範囲のマッピングには適しません。
スキャン型LiDAR
レーザーを回転させながら360度のスキャンを行うことで、周囲の環境をリアルタイムで測定するタイプです。
特に自動運転技術やロボット工学で多く採用されています。スキャン型は、広範囲の3Dデータを取得できるため、動的な環境下での測定に優れています。
たとえば、自動運転車はスキャン型LiDARを用いて周囲の歩行者や障害物をリアルタイムで検出し、安全なルートを判断します。
どの場面でどちらを使うべきか?
固定型とスキャン型LiDARの使い分けは、用途に応じて決まります。
- 固定型が適している場面
- 工場の生産ライン(一定の位置にある物体の測定)
- 交通監視(特定の範囲に限定した計測)
- 建築測定(正確な位置情報の取得)
- スキャン型が適している場面
- 自動運転(リアルタイムで周囲環境を把握)
- ロボティクス(移動しながらの環境認識)
- ドローン測量(広範囲の地形データ取得)
どちらのLiDARを選ぶかは、必要な精度、測定範囲、リアルタイム性などを考慮して決定することが重要です。
LiDARの活用分野と具体的な事例
自動運転への応用

LiDARは自動運転車の「目」として、周囲の環境を高精度にスキャンする役割を果たしています。
例えば、Waymo(Googleの自動運転部門)では、360度スキャン可能なLiDARを車両に搭載し、歩行者や障害物の検出を行っています。
一方、TeslaはLiDARを採用せず、カメラベースのアプローチをとっている点も興味深い比較ポイントです。
3Dスキャン・測量・地図作成

LiDARを活用することで、精密な地形データを取得し、建築設計や都市計画に利用されています。
ドローンにLiDARを搭載することで、広範囲の測量を短時間で行うことが可能となり、山間部や災害地でのマッピングにも活用されています。
3Dスキャン記事:スマホやタブレットの3Dスキャンアプリを解説|iPad/iPhone/Androidや産業専用3Dスキャナーを幅広く紹介
AR/VRでの活用

AppleのiPhoneやiPadに搭載されたLiDARセンサーにより、AR/VRの精度が飛躍的に向上しました。
特に、仮想オブジェクトを現実世界に自然に配置できるオクルージョン技術(物体の隠れ表現)において大きな進歩が見られます。
産業用途(建築・農業・災害対策)

- 建築:BIM(Building Information Modeling)により、正確な設計が可能。
- 農業:作物の成長をリアルタイムで分析し、収穫の最適化を実現。
- 災害対策:地形マッピングによる洪水・土砂災害の予測と対策。
最新のLiDAR技術とトレンド
小型化・低価格化の進展
LiDAR技術は急速に進化しており、スマートフォンへの搭載など、小型化と低コスト化が進んでいます。
スマートフォン搭載型LiDARの進化
AppleのiPhoneやiPadに搭載されたLiDARにより、個人レベルでの3Dスキャンが一般化しつつあります。
Scaniverse記事:【3Dスキャンアプリの筆頭】iOS・Android両対応「Scaniverse」|使い方やほかのツールとの比較
まとめ
LiDARは、自動運転、3Dスキャン、AR/VR、産業用途など、さまざまな分野で活用される重要な技術です。その高精度な距離測定能力により、現実世界をデジタル化し、より精密なマッピングやデータ解析を可能にします。
近年では、スマートフォンへの搭載や小型化・低コスト化が進み、個人レベルでの活用も増えてきました。特に10万以下で購入できるデバイスやiPadなど、日本市場でもさまざまなLiDAR技術が発展を遂げています。
LiDARの進化は、私たちの生活や産業のあり方を大きく変える可能性を秘めているので最新の技術動向に注目しつつ、その活用方法を模索していきましょう。
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