デジタルツイン事例5選|製造業・物流・都市開発・医療での国内外の活用と効果
デジタルツインとは?最新活用事例と導入メリット
近年、製造業や物流業をはじめ、さまざまな業界で注目されている「デジタルツイン」。現実空間の設備や環境を仮想空間に再現し、リアルタイムでデータを同期できるこの技術は、生産性の向上やリスク低減に直結します。
この記事では以下を解説します。
- デジタルツインの基本概要と構成技術
- 国内外の各業界の最新活用事例
- 業界別の導入効果とメリット


デジタルツインの概要
デジタルツインとは、現実世界の設備や環境を高精度な3Dモデルとして仮想空間に再現し、リアルタイムに同期させる技術です。IoTセンサーやカメラ、PLCから取得したデータを統合し、現場の状態を可視化・分析します。設備の監視や異常検知、シミュレーションによる改善策検証など、幅広い用途で導入が進んでいます。
デジタルツイン技術の構成 – Unity・AWS/Azure

デジタルツインの構築には、
- 3Dデータの制作:3Dスキャナ、3DCADなど現実空間の3D化
- 3D空間の構築やオブジェクト同士のシミュレーションを行うゲームエンジンのUnity
- データ収集・蓄積・配信を行うAWS/Azureなどのクラウド基盤
- 現実空間のデータを吸い上げるIoTツール
などが必要になります。現場のデータをAWSに集約し、Unityベースのビューアでリアルタイム表示。これにより遠隔地からの監視や操作支援が可能となり、業務効率化と安全性向上が同時に実現します。
デジタルツインによるシミュレーションの利点
現物を動かすことなく仮想空間で動作検証や工程改善を行えるため、導入効果の試算やリスク評価が可能です。
コスト削減・トラブル予防・意思決定のスピード向上など、現場の生産性を飛躍的に向上させます。
製造業のデジタルツイン活用事例と効果
ダイキン工業・デンソー・富士通などのデジタルツイン施策

国内では、ダイキン工業・デンソー・富士通が工場でのデジタルツイン活用施策を進めています。
ダイキンは、2018年に空調機器の製造の生産管理にデジタルツインを導入し、生産プロセスの効率化と製品品質の向上を実現。
デンソーグループ会社のデンソーウェーブは、デジタルツインシステム「DTS」を構築し、工場の生産ラインを仮想空間上に再現することで、実際の生産プロセスをリアルタイムでシミュレーションすることを可能にしています。
富士通は、車両の設計、製造、運用、保守の各段階でデータを統合・分析することで、生産プロセスの効率化や製品品質の向上を実現しています。
物流のデジタルツイン活用事例と効果(海外)
DHL社(国際物流)

物流分野においてパッケージ・コンテナ、出荷品、倉庫・配送センター、物流インフラ、グローバルネットワークといった多層的な領域でデジタルツインが活用されています。IoTセンサーや3Dスキャンで貨物や施設をリアルタイム監視し、損傷検知・温度管理・動線最適化を実現。港湾や空港ではAI予測による効率化、ネットワーク全体では輸送経路や在庫配置の最適化を行い、物流効率と品質管理を同時に向上させています。
物流業のデジタルツイン活用メリット
- 品質維持・損傷防止:輸送中の温度・湿度・衝撃をリアルタイム監視し、医薬品や精密機器などの品質劣化や損傷を未然に防止
- 運用効率化:倉庫や配送センターのレイアウト・動線をデータに基づいて最適化し、ピッキングや搬送の作業効率を向上
- 設備保守コスト削減:コンテナや梱包材の状態を3Dスキャンで把握し、必要な修理や交換を適切なタイミングで実施することで無駄なコストを削減
- 輸送ルート最適化:グローバルネットワーク全体をモデル化し、交通状況や需要変動を踏まえてルートを最適化することで配送遅延を削減
- リスク低減:港湾・空港などの複合拠点でシミュレーションを行い、渋滞や混雑による遅延リスクを事前に回避
医療業界のデジタルツイン活用事例・AIとの相乗効果

日本で初となるデジタル医療データバンクの構築が進められています。本プロジェクトは、診療情報、ゲノム情報、医用画像、薬剤情報など多様な医療データを統合し、AIを活用した次世代診療ワークフローの確立を目指すものです。
従来のバイオバンクは生物学的試料の収集・保存が中心でしたが、今回の取り組みではHL7 FHIR準拠の電子カルテ連携や医療画像マルチポータル基盤を採用し、がん専門医療機関とのデータ共有を実現。肺がんにおける新規治療標的「HER2」の同定や、内視鏡・超音波診断支援AIの実証(POC)取得にも成功しました。
AIは病変検出や検査支援を担い、結果をリアルタイムで医師にフィードバックすることで、診療負担の軽減や医療安全の向上に寄与します。また、この基盤は研究支援や若手医療DX人材の育成にも活用され、薬事承認や保険収載を見据えた社会実装が進行中です。
都市業界のデジタルツイン活用事例と効果 – BIM・PLEATAU
鹿島建設(日本)

鹿島建設は、ピクシーダストテクノロジーズ(PXDT)と共同で、建設現場向けデジタルツイン基盤「鹿島ミラードコンストラクション™(KMC)」を開発しました。
この基盤は、施工前に設計されるBIMデータと現場で取得されるレーザースキャナー・ToFセンサー・Webカメラなどの空間データをクラウドで一元管理します。データには撮影日時のタイムスタンプが付与され、現場の状況が変化するたびに更新される「デジタルツイン」として機能します。さらに、BIMと現場の点群データを重ね合わせ、施工済み部分を色分けした「出来形ビュー」の表示や、部材単位での進捗率算出が可能です。
これらは専用の3DビューアやWebブラウザから閲覧でき、リアルタイムに変化箇所を色分けする画像解析にも対応。これにより、施工管理・遠隔管理・ロボット搬送の効率が飛躍的に向上し、建物ライフサイクル全体のデジタル化とDX推進に貢献するとのことです。
国土交通省のデジタルツイン「PLATEAU(プラトー)」

国土交通省が推進する「デジタルツイン・PLEATAU(プラトー)」は、都市の3Dデータを活用し、都市計画や防災対策などの分野でリアルタイムなシミュレーションを可能にするプラットフォームです。
このプラットフォームは、自治体や企業がデータを共有し、効率的な都市管理や新たなサービスの開発を支援することを目指しています。
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まとめ|デジタルツイン導入で得られる効果と次のステップ
デジタルツインは、製造業・物流・都市開発などあらゆる産業で効率化・コスト削減・リスク低減を実現できる技術です。
国内外の事例は、導入によって生産性向上や安全性確保に直結することを示しています。
これから導入を検討される企業は、まず小規模なPoC(実証実験)から開始し、自社に最適なシステム構成や運用フローを固めることをおすすめします。

私たちForgersは、Unity・AWSを活用したデジタルツイン構築から運用までを一貫支援しています。
従来、製造・通信・小売業など幅広い業界の企業に対して、VR/ARやデジタルツインの実装・コンサルティング支援を行ってまいりました。
NTTドコモ、アイシン、ニトリ、NTT東日本などのXR開発や、大手化学メーカーの「工場のデジタルツイン化」も支援しており、スマートファクトリーの実現や、工場のデジタルツインの実現に向けて、企画・設計のコンサルティングや3D/XR開発も行います。
「自社に合うデジタルツイン活用方法を相談したい」という方は、ぜひこちらからお気軽にお問い合わせください。

